妻「今月からお小遣い制を導入しようと思うんだけど……」

妻「あなたのお小遣い……月1000円ね」

夫「……」

妻（うふふ、これは怒るでしょ、怒るに決まってるわ！）

夫『貴様、月1000円でどうしろというのだ！？　夫を舐めるのもいい加減にしろォ！』

妻（ってビンタの二発や三発はかますに違いない！　ああ……怒るあなたもステキ）

妻（さぁ……来て！　亭主関白なあなたを見せて！）

夫「うん、分かった」

妻「！？」

ワロタ

妻「うん、分かったって……いいの！？」

夫「いいけど」

妻「だって月1000円よ！？　30で割ったら一日30円ぐらいなのよ！？　駄菓子買ったら終わりよ！？」

夫「平気平気、そのぐらいあれば十分だし」

妻「十分！？　“10分でなくなる”の間違いじゃなくて！？」

夫「それじゃ1000円ちょうだい」

妻「分かったわ……」

へそくりがあるんじゃね

>>11
なかなかアグレッシブだな

夫「……」ｽﾀｽﾀ

妻「……」ｺｿｺｿ

妻（バレないように尾行しなくっちゃ……）

夫「……」ｸﾝｸﾝ

夫「後ろから妻の匂いが……」ｸﾙｯ

妻「！？」ﾋﾞｸｯ

妻「私は木の精〜♪　木の精〜♪」

夫「なんだ、木の精か……」ｸﾙｯ

妻（危なかった……）

これはできる妻

妻
夫
木

―会社―

夫「……」ｶﾀｶﾀ

課長「これ頼むよ」

夫「分かりました」ｶﾀｶﾀ



妻（う〜む、真面目に仕事してる。おかしな様子はない……）

同僚「あの……なにしてるんです？」

妻「ちょっと夫の仕事ぶりを拝見に……オホホ」

同僚「はぁ……」

室内かよｗ

ｷｰﾝｺｰﾝ…

課長「お、昼休みだ」

同僚「ご飯にするかー！」

夫「よーし、僕も」



妻（いよいよ昼ご飯だわ……）

妻（だけど、月1000円でどうするつもり？）

どうさせるつもりだったんだよ

どうするんだろうか

同僚「お前は今日も草にするのか？」

夫「うん」



妻（草ァ！？）

妻（まさか……危ないハーブでもやってるの！？　空腹感をごまかせるような……）

妻（そんな……あの人が中毒者だったなんて……）

妻（だけど、そんな危険なあなたもステキ！）

―空き地―

地主「いらっしゃい」

夫「今日も草を食べに来ました」

地主「どうぞどうぞ」

夫「いただきます」ﾑｼｬﾑｼｬ



妻「まさかの雑草！？」

妻「あんなに美味そうに食ってまぁ……」

妻「私もちょっと食べてみよっと」ﾑｼｬｯ

妻「あ、案外イケるわこれ」ﾑｼｬﾑｼｬ

地主の許可もらってて草

その夫婦てんとう虫だったか

牛でももっとマシなもん食ってるぞ

夫「……」ﾑｼｬﾑｼｬ

妻「おいしい〜！」ﾑｼｬﾑｼｬ

夫「ん？」

妻「！？」ｷﾞｸｯ

夫「妻にそっくりな人がいる……」

妻（ま、まずい……！）

妻「私は草の精〜♪　草の精〜♪」

夫「なんだ、草の精か……」ｸﾙｯ

妻（危なかった……）

なんだ草の精か…

草の精として同族を食うのはどうなんだ

夫「ふぅー、食った食った」

夫「あとは……大気から栄養を取り入れようかな」

夫「……」ｽｩｰ…



妻（大気から栄養って……仙人じゃないんだから）

妻（だけど、お昼がこんなんじゃ、きっと栄養が偏ってるんじゃ……）

妻（と、ここであの人の健康診断を拝見）ｻｯ

妻「すげえ、オールA！」

夫「なにやってるの？」

後輩「最近はスマホゲーにハマってまして……」

後輩「もう課金しまくりですよー」

夫「へぇ……」



妻（月1000円のお小遣いじゃ、当然課金なんかできるわけもなく）

妻（さあ、あなたはどんな遊びをするの？）

後輩「先輩はなにしてるんです？」

夫「最近はどんぐりに爪楊枝つけて独楽にしたので遊んでるよ」

後輩「ギャハハ、マジっすかぁ？　まるで子供じゃないっすかぁ！」



妻（ああ、後輩にバカにされる哀れな夫……）

妻（私が出来の悪いケチ妻なばかりに……帰ったら思う存分なじってちょうだいな）

夫「じゃ、回すよ」

夫「それっ！」

ｷﾞｬﾙﾙｯ!　ｷﾞｭｨｨｨｨｨﾝｯ!　ｷﾞｬｷﾞｬｷﾞｬｯ!　ｷﾞｬﾙﾙﾙﾙﾙﾙｯ!

後輩「パネェ！　なんすかこれぇ！　どんぐりがなんつー躍動感！」

後輩「俺にも教えて下さいッ！」

夫「いいよ」



妻（すげええええええ！）

妻（会社辞めてどんぐり回しで食っていくっていわれても許す！）

食いついててワロタ

楽しそうじゃねぇか

音がどんぐりのそれじゃないｗｗ

ちょっとどんぐり拾ってくる

夫「外回りに行ってきます」

課長「ああ、頼んだよ」



妻（出ました、営業マンの外回り！）

妻（外回りといえばサボリ！）

妻（ひょっとして、やっとお金を使うところを見られるかも……）

夫（もう一社回ったら、帰社するか）

夫「ん？」

子供「うえぇぇん……うえぇぇん……」

夫「坊や、どうしたんだい？」



妻（見ず知らずの子供に優しく話しかけてる！）

妻（ああ……私があの子供になりたい……）

子供「お金落としちゃって……おうちに帰れない……」

夫「このあたりじゃ交番もないしなぁ……」

夫「そうだ、1000円あげるよ。これを交通費にしたらいい」

子供「いいの？」

夫「もちろんだとも」

子供「ありがとう！」



妻（はい、一ヶ月分のお小遣い全消費！）

夫「今日はこんなところでいいかな」

夫「僕はそろそろ上がるよ」

同僚「お疲れー！」



妻「それじゃ私も失礼します」

同僚「奥さんもお疲れ様です……」

妻職場で馴染んでてワロタ

夫「お、居酒屋だ。ちょっと寄っていこうかな」



妻「えっ……」

妻（今あの人の財布には1円も入ってないはず……）

妻（居酒屋に寄ってどうするつもり？　やっぱり女が……！）

主人「たまに来てくれて、皿洗いしてもらって助かるよ」

夫「いえいえ」ｼﾞｬﾌﾞｼﾞｬﾌﾞ…

主人「本当に助かってるし、よかったらバイト代、払おうか？」

夫「本業があるんで問題ないですよ」ｼﾞｬﾌﾞｼﾞｬﾌﾞ…



妻（問題ない？　今のあなたは文無しでしょうが！）

夫「皿洗いすると気持ちいいな〜、心まで洗われるようだ」

夫「だけどここらでちょっと酔っ払いたいな」

夫「体内でアルコールを生成！」ﾎﾜｧﾝ…

夫「ふぅ〜……いい気持ちだ」



妻「体内に養老の滝でもあるの！？」

何者だよ

人間辞めてんな

草食って酒生成か
酵母でも飼ってるのかな?

夫「ただいまー」

妻「……お帰りなさい」

夫「どうしたの？　なんだか疲れてるけど……」

妻「色々あってね……」

夫「そういえば、ご飯は？」

妻「あー、いっけない！　今すぐ作るわ！」ｱﾀﾌﾀ

休みの日――

妻（このままじゃいけないわ）

妻（あの人にもちゃんと“散財する楽しさ”を味わってもらわないと！）

妻（こうなったら私の蓄えから……）

妻「あなた」

夫「ん？」

妻「突然だけど10万円あげる」

夫「ホントに突然だね……」

妻「これを……全部スッてきなさい！」

夫「えええええ！？」

夫「スるっていってもどうやって……」

妻「競馬でもなんでもいいから！」

妻（もちろん、夫はあっけなくスッてしまうはず。すると、当然こうなる）

夫『ごめんよぉ、君からもらった10万円を……！　僕は……僕って奴は！』

妻（そこを慰める！）

妻『いいのよ、私はぜーんぜん気にしてないから。お金よりあなたの方がだ・い・じ』

夫『僕はなんて優しい妻と結婚してしまったんだ……自分の女運が怖い！』

妻「そして、今夜は燃え上がるゥ！　完璧な計画すぎるッ！」

怖ッ

なんかあれ思い出すな
吉良吉影の奥さん

>>83
勝っててクソワロタ

夫「しかも……」

妻「まだあるの？」

夫「この前僕、お金を落とした子供を助けたんだけど……」

妻「ああ、交通費に1000円あげた子ね」

夫「なんで知ってるの？」

妻「ま、いいからいいから。で？」

夫「その子とご両親に偶然出会って……お返しにと結構な大金をもらっちゃって……断り切れなくて……」

妻「なんという昔話！」

妻「私、お金をスッて落ち込んだあなたを励ますため、一生懸命ご飯を作ったのに……」

夫「わっ、豪華な食事！　どれもおいしそう！」

妻「だけど……全部無駄になっちゃった」ｸﾞｽｯ

夫「そんなことないよ」

妻「え？」

夫「君が僕のために一生懸命作ってくれた料理に……無駄なことなんてあるもんか！」

妻「あなた……！」

妻「私やっぱり、あなたが好きィィィィィ！」ｶﾞｼｯ

夫「僕もだよ」



妻（この日、私たち夫婦は燃え上がった――）

ようやく本編か

燃え上がったか

……

妻「色々考えた結果……」

妻「あなたのお小遣い、やっぱり月1000円にしとくわ」

夫「うん、それぐらいがちょうどいいよ。多すぎず少なすぎずで」

妻（どう考えても少ないと思うけど）

妻「それじゃ、行ってらっしゃい」

夫「行ってきます！」

妻（これで……よかったのよね、きっと）

やがて――

夫「あ、あの……妻は！？　赤ちゃんは！？」

ナース「どちらもお元気ですよ。元気な女の子です」

夫「よかった……！」

妻「あなた……」

夫「よく頑張ったね」

妻「ありがとう」

夫「顔は君に似てるね。きっと君に似た可愛い子に育つよ」

妻「あなたったら……」

……

……

娘「はい、肩揉み100回！」ﾓﾐﾓﾐ

妻「あー、気持ちよかった。お駄賃あげるわね」

娘「ううん、いらない」

妻「どうして？」

娘「あまり必要ないから」

妻「だけど可愛いお人形さん、欲しいでしょ？」

娘「その辺の材料で自作できるし」ｻｯ

妻「なにこれ、人形作りで食ってけるレベル！」

血は争えないな

妻「じゃあ今月のお小遣い……あなたには1000円」

夫「ありがとう！」

妻「あなたには希望通り10円」

娘「やったーっ！」

妻（似た者親子だわ……）







―おわり―

乙
楽しかった

乙
この一家は世界から文明消えても生きていけそう